就労移行支援と就労継続支援はどちらも障害者の就労を支援するサービスですが、これらは目的、対象者、契約形態など様々な点で違いがあります。この記事では、それぞれの制度の違いを、国の公的資料に基づいて解説します。
目次
就労移行支援と就労継続支援の違い(結論)
就労移行支援と就労継続支援の最も大きな違いは、その目的にあります。就労移行支援は一般企業への就職を目指すための訓練が中心ですが、就労継続支援は働く機会そのものを提供することを主眼としています。
目的と役割の違い
就労移行支援の目的は、一般就労への移行です。事業所内での作業や職場実習、就職活動のサポートを通じて、就職に必要なスキルを身につけるための訓練や定着支援を行います。利用期間は原則として24か月(2年)と定められています。
一方、就労継続支援は、すぐに一般就労することが難しい方に対して就労や生産活動の機会を提供することが目的です。これには「A型」と「B型」の2種類があります。
- 就労継続支援A型: 事業所と雇用契約を結び、賃金を受け取りながら働きます。
- 就労継続支援B型: 雇用契約は結ばず、生産活動に対する「工賃」を受け取ります。利用期間に制限はありません。
このように、一般就労への「訓練期間」と位置づけられるのが移行支援、働く「場所」としての役割を担うのが継続支援です。
賃金(A型)と工賃(B型)の違いと最新実績
就労継続支援A型とB型では、報酬の名称と金額が大きく異なります。A型は雇用契約に基づく「賃金」、B型は生産活動に対する報酬である「工賃」が支払われます。
厚生労働省が発表した令和5年度の全国平均月額[1]は以下の通りです。
- A型の平均賃金: 86,752円
- B型の平均工賃: 23,053円
A型は最低賃金が保障される雇用形態であるため賃金が高く、B型は比較的軽易な作業を短時間で行うことが多いため、工賃は低くなる傾向にあります。この金額の違いは、A型とB型の制度上の役割の違いを反映した結果と言えます。
費用(自己負担)の考え方
就労移行支援や就労継続支援といった障害福祉サービスを利用する際の自己負担額は、世帯の所得に応じて月ごとの上限額が定められています。この仕組みにより、利用者の経済的負担が軽減されています。
具体的な上限額は以下の通りです。
| 所得区分 | 月額上限額 |
|---|---|
| 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 市町村民税非課税世帯(低所得) | 0円 |
| 一般1(市町村民税課税世帯) | 9,300円 |
| 一般2(上記以外) | 37,200円 |
例えば、市町村民税が非課税の世帯であれば、自己負担なくサービスを利用できます。また、同じ世帯に複数のサービス利用者がいる場合でも、合算した負担額がこの上限を超えることはありません。
各制度の基本情報
ここでは、各制度の対象者やサービス内容、利用期間といった基本的な情報を整理して解説します。
就労移行支援の対象・内容・期間
対象者は、一般企業などへの就労を希望する65歳未満の障害のある方です。具体的には、就労に必要な知識や能力の向上のための訓練を必要とする方が該当します。
主な内容は、個別の支援計画に基づき、以下のような多岐にわたる支援を提供します。
- 事業所内での作業等を通じた職業準備訓練
- 求職活動や履歴書作成の支援
- 適性に合った職場探しのアドバイス
- 職場見学や職場実習の機会提供
- 就職後の職場定着支援
利用期間は、標準で24か月(2年)と定められています。ただし、市町村の審査会で必要性が認められた場合に限り、最大1年間の更新が可能です。事業所には、サービス管理責任者や職業指導員、就労支援員などの専門職員の配置が義務付けられています。
就労継続支援A型の基本(要点)
就労継続支援A型は、利用者と事業所が雇用契約を結ぶことが最大の特徴です。これにより、利用者は労働者として保護され、原則として最低賃金以上の「賃金」が支払われます。
一般就労が難しいものの、雇用契約に基づく就労が可能な方が対象となります。仕事内容は事業所によって様々ですが、利用者は労働の対価として安定した収入を得ながら、知識や能力の向上を目指すことができます。
令和5年度の全国平均賃金は月額86,752円となっており、B型の工賃と比較して高い水準にあります。これは、A型が「雇用による就労の場の確保」という役割を担っているためです。
就労継続支援B型の基本(要点)
就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに、比較的軽易な生産活動に参加できるサービスです。年齢や体力の面で、雇用契約を結んで働くことが不安な方や、自分のペースで働きたい方が主な対象となります。
利用者は生産活動の対価として「工賃」を受け取ります。令和5年度の全国平均工賃は月額23,053円です。B型の目的は、就労や生産活動の機会を提供すると同時に、一般就労に必要な知識や能力が高まった人に対しては、一般就労への移行を支援することも含まれます。
利用期間に定めがないため、長期的な利用が可能です。事業者は、利用者の工賃を目標水準以上に引き上げる努力義務を負っています。
就労定着支援(関連サービス)
就労定着支援は、就労移行支援や就労継続支援などを利用して一般就労へ移行した障害のある方を対象とした、比較的新しいサービスです。就職してから6か月が経過した時点から利用を開始できます。
主な支援内容は、就職後の生活リズムの乱れや、職場での人間関係といった課題を解決するためのサポートです。支援員が定期的に利用者との面談や企業訪問を行い、職場の上司や同僚、家族、関係機関との連絡調整役を担います。
これにより、利用者が職場で長く働き続けられるように支援します。利用期間は原則として3年間です。
比較に使える具体データ
制度を選ぶ上で重要な「収入」と「費用」に関する具体的なデータを紹介します。
賃金・工賃の全国平均(月額)
厚生労働省の令和5年度の報告によると、就労継続支援A型とB型の全国平均の月額報酬は以下の通りです。
- 就労継続支援A型(賃金): 86,752円
- 就労継続支援B型(工賃): 23,053円
A型は雇用契約を結ぶため、労働の対価として賃金が支払われます。一方、B型は生産活動への参加に対する報酬として工賃が支払われるため、両者には大きな差があります。この金額は、どちらのサービスを利用するかを検討する上での重要な判断材料の一つとなります。
利用者負担の上限(月額の目安)
障害福祉サービスの利用者負担は、所得に応じて月ごとの上限額が設定されています。負担が大きくなりすぎないように配慮されており、安心してサービスを利用できる仕組みになっています。
世帯の所得区分ごとの自己負担上限月額は以下の通りです。
| 所得区分 | 対象世帯 | 月額上限額 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 |
| 一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
多くのケースで自己負担は0円または9,300円の範囲内に収まります。自分の世帯がどの区分に該当するかを確認することが重要です。
選び方の観点(公的情報から言えるポイント)
自分に合ったサービスはどれか、目的や期間、費用の観点から選び方のポイントを解説します。
目的からの選択
まず、「何を目指すか」という目的から考えるのが最も分かりやすい方法です。
-
一般企業への就職を目指したい場合:
必要なスキル習得のための訓練から、就職活動、就職後の定着支援まで一貫したサポートを受けられる「就労移行支援」が制度の目的に合致しています。 -
雇用契約を結んで安定的に働きたい場合:
事業所で働きながら賃金を得ることを希望する場合は、「就労継続支援A型」が該当します。 -
自分のペースで無理なく働きたい場合:
雇用契約は結ばずに、体調や状況に合わせて生産活動に参加したい場合は、「就労継続支援B型」が適しています。
このように、将来の目標や現在の状況に応じて、最適なサービスを選択することが大切です。
期間・費用の観点
次に、利用できる期間や費用の観点から検討します。
利用期間には大きな違いがあります。
- 就労移行支援: 標準24か月(2年)という期限があります(条件付きで更新可)。
- 就労継続支援B型: 利用期間の制限はありません。
- 就労継続支援A型: 雇用契約に基づくため、B型とは期間の考え方が異なります。
費用については、前述の通り、どのサービスを利用する場合でも障害福祉サービス共通の利用者負担上限額が適用されます。そのため、サービスの種類によって自己負担額が大きく変わることはありません。まずは世帯の所得状況を確認し、月々の負担額がどのくらいになるかを把握しておくと良いでしょう。
相談・次のステップ
制度についてさらに詳しく知りたい、具体的な事業所を探したい場合の相談先を紹介します。
公的相談窓口
サービスの選択に迷った場合や、お住まいの地域にある事業所の情報を知りたい場合は、「障害者就業・生活支援センター」への相談が有効です。
このセンターは、障害のある方の「就業」と「生活」に関する相談を一体的に受け付けている専門機関です。制度の説明はもちろん、個々の状況に合わせたアドバイスや、事業所の見学調整なども行ってくれます。全国に設置されており、厚生労働省のウェブサイトから最寄りのセンターを探すことができます。
法的根拠
本記事で解説した各サービスは、障害者総合支援法に基づいて提供されています。
サービスの具体的な人員配置や設備、運営に関する基準は、関連する厚生労働省令によって詳細に定められています。制度の正確な定義や要件を確認したい場合は、これらの法令が一次情報となります。
まとめ
就労移行支援と就労継続支援の最も重要な違いは、その役割と目的にあります。
- 就労移行支援: 一般就労を目指すための「訓練」と「準備」を行うサービス。
- 就労継続支援A型: 「雇用契約」を結び、賃金を得ながら働くサービス。
- 就労継続支援B型: 「雇用契約なし」で、工賃を得ながら生産活動に参加するサービス。
どのサービスが自分に合っているか迷った場合は、一人で悩まず、地域の「障害者就業・生活支援センター」などの公的な相談窓口を活用し、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
[1] 令和5年度工賃(賃金)の実績について:https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001391049.pdf

