人を生かすAI活用とは?就労支援事業所「てとて」が実践する新しい支援のかたち

公開日:2025/07/07

人を生かすAI活用とは?就労支援事業所「てとて」が実践する新しい支援のかたち

AI時代の障がい者就労支援はどうあるべきか。「非効率ゼロは、人を生かす」を信念に掲げる株式会社Jinと、「好き」を軸にした就労支援で注目を集める「てとて」の中村代表が語り合った。

異色の経歴を持つ経営者が就労支援に参入した理由

小川(Jin)

まず、中村社長の自己紹介をお願いします。

中村社長(てとて)

中村社長
中村浩之 上場企業も含む多数企業のマーケティング及び人事コンサルティング事業を展開。7人の子の父親でもあり、未来を明るく楽しいものに出来るようなイベントのプロデュースにも携わっている。

3年前に独立して、企業のコンサルをしながら、障がい者のA型事業所さんにお仕事を回す業務委託を福岡県・福岡市から受けていたんですね。そこで福祉の方々から「作業療法士でもあり、ビジネス経験もある中村さんのような人が業界に入って活躍することが、福祉の発展につながる」と言っていただいて。

てとて
てとて公式HP

小川

なぜビジネス経験者の参入が価値になるとお考えでしょうか?

中村社長

シンプルに言うと、就労支援で最も重要なのは「どれほど多くの選択肢を見せられるか」だと思うんです。私が就労支援を受けるとしたら、「どんな職業があるんですか?この中からたくさん選びたい。自分の好きを見つけたい」と当然思うでしょう。

でも障がい福祉の専門家の方が、そんなに広い視野で職業の種類やカテゴリーのリテラシーを持っている確率は、正直低いんです。私たちのような様々な企業と関わってきた経験が、選択肢を提示できるという意味で価値があると考えています。

「これができるから、それを仕事にする」ではなく、「『やりたい』を見つけてから、『やりたい』を叶えるためにスキルを身につける」。この本質的なウェルビーイングに焦点を当てた就労支援ができるんです。

株式会社Jinが目指す「メタDX」とは

小川

株式会社Jinは「非効率ゼロは、人を活かす」という信念のもと、AIを活用した新しいDX「メタDX」をアプリケーション「AURA(オーラ)」として提供しています。

アプリケーション「AURA(オーラ)」
アプリケーション「AURA(オーラ)」

単に便利なツールを入れる、ちょっとAIを使う、ではなく、いかにその方のお仕事や価値・魅力を最大限に引き出せるような形でテクノロジーやAIを使っていくか。それが「テクノロジーの生きた活用」だと考えています。

障がい福祉分野では、就労移行支援事業所さん、A型・B型事業所さんのサビ管(サービス管理責任者)さんを中心に、業務をお手伝いする「助手AI」をお届けしています。書類作成時間を90%削減することで、その分利用者さんに向き合う時間が増え、支援員さんの魅力がもっと伝わり、利用者さんの笑顔につながっています。

「コミュニティ×就労支援」が生み出す相乗効果

小川

「てとて」さんの大きな特徴として、社長さんや個人事業主の方も一緒にコワーキングスペースとして働いているという点があります。これによってどんな相乗効果が生まれているのでしょうか?

中村社長

まず前提として、私たちの周りには既に様々なプロジェクトが動いています。この前提があることで、普通の就労支援事業所では雇えないような、プロの現役マーケターやWebデザイナー、動画編集者がここにいる状況を作れるんです。

現役のプロから教わることができる。これが利用者さんにとって大きなメリットです。リアルな仕事を通して学べるんです。

単に「Webデザインを学びます」「Illustratorができるようになります」では、実際のクライアントワークで通用しません。うまい絵が描けても、マーケティングでものが売れるものを作らなければ意味がない。でも私たちはそのリアリティをど真ん中で生きているから、本当のお金を稼ぐところまで含めてサポートできるんです。

逆に、利用者さんって天才が多いんですよ、ある部分では。「そんな発想がある?」「そんなに集中してずっとできる?」という人たちがチームに入ることで、私たちも新しい感覚を注入してもらえる。本当にお互いにメリットがあって、

一人一人がアベンジャーズのメンバーなんです。

「好き」を軸にした就労支援の実践

小川

「好き」や「喜び」を見つけてあげることを「ゼンドリ思考」でも大切にされていますが、これは施設全体で大切にされているのでしょうか?

中村社長

障がい者就労支援って、人助けでもボランティアでもないんです。

お互いにとってメリットのある話じゃないと、サステナブルなものはないと思っています。

障がいを持った方を雇った企業にとっても、単なる障がい者雇用枠を埋めるだけでなく、ちゃんと企業の利益につながる、活躍してくれる人としてエンゲージメントできないと続かない。

人がどんな時に力を発揮するかを考えると、得意と思えること、自分からやりたいと思えることを、いかに主体的に「それをやることがその人自身の喜びか」というところに結びつけた時に、人はとんでもない力を発揮すると思うんです。

「私、これがやりたい」という、全然根拠のない、全く的外れなことであったとしても、この「やりたい」と思ったモチベーションをスキル獲得につなげていく。そして就職した時に「やりたいができる」から活躍できる、「だって好きなことなんだもん」となってないと、企業さんの役に立てないんです。

一人ひとりに寄り添う支援のプロセス

小川

何をやりたいかも分からない、考えたこともなかった利用者さんには、どのようにアプローチされるのでしょうか?

中村社長

半々ぐらいですね、そういう方は。全く考えたこともないパターンの場合は、とにかくいろんなものを見せます。テレビ局に連れて行ったり、いろんな会社さんに連れて行ったりして、「今興味があるかどうかはどうでもいいから、一回見に行ってみない?」と。

実際に足を踏み入れてみると、いろんなものが見える。それで選択肢が増えていきます。

うちの事業所には電通やテレビ局など、いろんな人が打ち合わせに来るんです。そういうことも見ながら職業の幅、関わり方の幅をどんどん知っていって、「なんか、あれ面白いなあ。あの人かっこいいなあ」と思ったことが出てきたら、「教えて」と。

「好き」を見つけて、それに向かってタスクに落とし込んでいく作業をやらないと、なんとなく「動画編集やってみる」では何も身に入らないんですよ。

一方で、「歌手になりたい」など熱量はあるけれど難しいこともある。でも「これは無理だ」とは言いません。「じゃあ、歌手になるにはどうしたらいい?」と真剣に一緒に考える。「みんなの前で歌ってみようか?」と提案したりして。

実際にやることができなかった場合、「自分、人の前で歌うことができないんだな」という気づきが生まれる。でもそれは非常に大切な体験です。理想を求めるだけではなく、ちゃんとその方がウェルビーイングのもとで生活できるために何が必要か、相談しながらやっていきます。

ただ、どこまでも「やりたい」を一緒に見つけていこうというこだわりは、めちゃくちゃ強いです。

AI時代だからこそ「人」にフォーカスする

小川

そこまで向き合って支援されていると、時間がいくらあっても足りないのではないでしょうか?

中村社長

そうなんです。だから小川さんのお話に戻って、メタDXをやっていただけるのはすごくありがたい。

私たちも普通の事業所よりはAIをめちゃくちゃ使っています。全部の会議を録音して、全部の面談を録音して、それをAIで整理して残しています。でも、AIがやれることの限界も感じているんです。

書類作成や請求業務にかなり時間を割かれるわけですが、これって利用者さんからしたら何も生まない瞬間なんですよ。本質的じゃない。

私たちが関わっているのは「人」であって、人には気持ちがあって、移り変わりがあって、ましてや様々な障がいを持っているから変動が大きかったりする人もいる。そこに人が人にちゃんと寄り添っていくことは、AIにはまだ数十年できないことだと思っています。

これが就労支援の本質なので、そこにフルベットしたい。でも「AURA」さんが入ることによって、そのベット量が確実に増える。本質的にやりたいところに人間がリソースを割けるために、こういうメタDXは超重要で、今後導入しない選択肢はありえないと思っています。

「人を大事にするからこそ、AIを使っていくべき」

録音とAIで実現する「聞くことに集中」できる面談

小川

面談を録音されているとお聞きしましたが、これはどのような効果がありますか?

中村社長

一番大きな理由は、話すことに集中して、聞くことに集中したいということです。メモを取ることに意識を向けるのではなく、相手の表情や言葉、仕草から多くのことに気づきたい。

もう一つは記録ですね。たくさんの人と関わるので、前回どういう話で、どこにたどり着いていたのかを、メモレベルではなく全部取っておきたい。AIに指示しておけば、次のステップを整理してくれるし、後で整理する時間を使いたくない。

対面のリソースの割き方と、対面のクオリティの向上には絶対つながっています。

小川

録音とAIがいるだけで、支援員さんが1.5人、2人いるぐらいのインパクトがありますよね。

中村社長

そうですね。あとは、利用者さんとのコミュニケーションの技術って非常にセンシティブで、熟練でないとできない。数をこなしていくことや、できる人がどんどん時間を割いていくことが必要です。

「人」にフォーカスしているからこそ、AIを導入しなければならないと思うんですよ。

人の感情の動きやモチベーションマネジメントにフォーカスして、そのクオリティを上げて人生の質を高めていくために、私たちは動く。そこに全力投球するためにAIを入れるんです。

支援員の「色」を活かすAI活用

小川

「AURA就労支援」では、録音データから個別支援計画書やモニタリングシートの作成もサポートしています。これはプロの支援員さんの「色」を出してほしいからこそ、草案まではしっかりやらせていただいて、一番価値が発揮できる場所に集中していただくという考えです。

中村社長

すごく嬉しいです。うちみたいなところが導入に合っているのかなと思います。

「AIで適当なことを」という意見もありますが、人がパターン化している作業は、自分でもちゃんと分析できていないんだと思うんですよ。意外と人間って職人技で作っているわけではなく、パターンがある。感覚でやっている感じはあるけれど、分析するとちゃんとロジックがあって、むしろ人間の体調や気分、環境でそのロジックはブレる。

逆にブレない方法論はAIの方が取れると思っています。

私は面談の時、単なるヒアリングや情報収集じゃないんです。8割方カウンセリングなんです。面談室に入ってきた時より、1%でもワクワクしたり、楽しみになったり、元気になってもらわなければ、私は何の価値もないと思っている。

勇気づけたい、元気づけたい、可能性を見出してほしい。ここが私のプロなので、ここにもっと集中したい。結局、勇気づけや動機づけ、エンパワーメントの方が就労に対して重要なので、こちらに力を注ぎたいと思っています。

選択肢を広げる支援の本質

中村社長

「ZIRITSU」(※学習カリキュラム生成AI)と「AURA」の掛け算は良いと思っています。私たちでも紹介できる選択肢の範囲は限られているから。

障がい者就労支援と企業組織における適材適所と子育てって、まったく一緒だと思うんです。全部、あらゆる選択肢をどれほど与えられて、その人の一番マッチする「好き」を見つけてあげるかしかできない。これをどれほど的確にやれるかで、活躍が全然違ってくる。

「やりたくてやってる」「主体的にやってる」をどれほど引き出すかを考えたら、全部一緒です。とにかく選択肢。そして「未来は分からない。自分で選んでくれ」という、時代の移り変わりが早い今、一番的確な人へのアプローチだと思います。

まとめ:人を生かすAI活用の未来

この対談を通じて見えてきたのは、AI時代における福祉支援の新しいあり方だ。「てとて」の実践が示すように、AIは人を置き換えるものではなく、人が本来持つ力を最大限に発揮するためのパートナーとして位置づけられている。

「好き」を軸にした支援、一人ひとりに寄り添うカウンセリング、そして無限の選択肢の提供。これらの本質的な支援にリソースを集中するために、事務作業をAIに任せる。

「人を大事にするからこそ、AIを使っていくべき」

という中村社長の言葉は、AI時代の福祉支援が目指すべき方向性を明確に示している。テクノロジーと人の温かさが融合した時、真の意味で「人を生かす」支援が実現するのではないだろうか。

※ZIRITSUについて

就労移行支援施設向けの、学習カリキュラム生成AIアプリケーション。利用者の興味や目標に合わせて、学習内容、難易度、学習時間などを設定すると、AIが約1〜2分で個別の学習コースを生成。支援員の教材作成などの手間を省き、利用者の心理的ケアといった本来のサポート業務に集中できるようにサポートします。

webサイト:https://ziritsu.com

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