障害福祉事業所のICT導入に使える補助金|対象・申請の流れ・注意点

公開日:2026/10/24

障害福祉事業所のICT導入に使える補助金|対象・申請の流れ・注意点

障害福祉事業所が業務ソフトやタブレットを導入するときは、都道府県等が実施する介護テクノロジー導入支援事業や、デジタル化・AI導入補助金を使える場合があります。交付決定前に契約しないことが前提です。

この記事では、2026年10月24日時点で公式資料から確認できた制度の種類、対象経費、申請の流れ、注意点を整理します。国の事業でも、実施の有無・募集時期・上限額は自治体ごとに異なるため、所在地の最新の募集要項で確認してください。

目次

  1. 障害福祉事業所のICT導入に使える補助金の種類
  2. 厚生労働省「障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業」
  3. 実施の有無・時期は都道府県や市ごとに違う
  4. 障害児支援の事業所向け:こども家庭庁のICT化推進事業
  5. デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)
  6. 自治体独自の補助(東京都の例)
  7. 対象になりやすい経費・対象外になりやすい経費
  8. 申請の流れ(一般的な手順)
  9. 申請前に押さえる注意点
  10. ソフト選びと補助金の関係
  11. よくある質問
  12. 関連記事
  13. 参考資料

障害福祉事業所のICT導入に使える補助金の種類

検討できる補助は大きく4つです。いずれも予算の範囲内で、募集期間中に要件を満たした申請だけが対象になります。

ICT導入に使える主な補助(2026年10月24日時点で公式資料から確認できたもの)
制度名実施主体対象経費の例確認先
障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業(ICTの導入支援など)都道府県・指定都市・中核市(国が費用の一部を補助)タブレット等の情報端末、記録・請求などのソフトウェア、Wi-Fiルーター、クラウド利用料・導入設定事業所所在地の都道府県・市の障害福祉担当課
地域障害児支援体制充実のためのICT化推進事業都道府県・指定都市・中核市(こども家庭庁の事業)障害児支援事業所の情報端末、ソフトウェア、通信環境機器、保守経費都道府県・市の障害児支援の担当課
デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)中小企業庁・中小企業基盤整備機構(事務局を通じて申請)事務局に登録されたITツールのソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費事務局の公式サイト(it-shien.smrj.go.jp)
自治体独自の補助都道府県・市区町村自治体ごとに異なる(例:東京都は業務支援システム、タブレット、コンサルティング経費)各自治体の福祉担当課・公式サイト

デジタル化・AI導入補助金は業種を問わない中小企業向けの制度で、社会福祉法人やNPO法人なども規模の要件を満たせば対象になります。

厚生労働省「障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業」

厚生労働省は、障害福祉現場の職員の業務負担軽減や業務効率化を目的に、介護ロボットやICTを導入する経費を補助する事業を設けています。2026年度(令和8年度)に募集されている事業は、令和8年1月15日付けの通知「障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業の実施について」(障発0115第3号)の実施要綱に基づくものです(実施要綱(島根県サイト掲載))。予算は令和7年度補正予算で計上されたもので、自治体によっては「令和7年度からの繰越分」として令和8年度に募集しています。

以前の「障害福祉分野のICT導入モデル事業」などで補助を受けた事業所も申請できますが、予算を超える場合は初めての事業所が優先されます(Q&A(令和8年1月20日時点))。

3つの区分と対象者

実施要綱の区分(令和8年1月15日付け通知)
区分主な対象経費対象となる事業者
介護ロボット等の導入支援移乗介護・見守りなどの場面で使う介護ロボット等障害福祉サービス、障害者支援施設、一般・特定相談支援、障害児入所施設、障害児通所支援、障害児相談支援の事業者
ICTの導入支援情報端末、ソフトウェア、AIカメラ等、通信環境機器、保守経費等障害福祉サービス、障害者支援施設、一般・特定相談支援の事業者(AIカメラ等は訪問系・就労定着支援・一般・特定相談支援を除く)
パッケージ型導入支援介護ロボットやICTを複数組み合わせて導入する経費など障害福祉サービス、障害者支援施設、一般・特定相談支援の事業者

業務ソフトやタブレットの導入で主に使うのは「ICTの導入支援」で、就労移行支援・就労継続支援などの障害福祉サービス事業所や特定相談支援事業所が対象者に含まれます。

補助率と上限額

厚生労働省の事業概要では、施設等への導入支援の補助率は国1/2、都道府県・指定都市・中核市1/4、事業者1/4とされています。1事業所あたりの基準額は実施する自治体が示します。たとえば島根県の令和8年度の募集では、ICTの導入支援が100万円、パッケージ型が1,000万円で、事業費150万円の場合は「基準額100万円×3/4=75万円」が補助額になる例が示されていました(島根県の事務連絡)。他の自治体の基準額や計算方法は、それぞれの募集要項で確認してください。

実施の有無・時期は都道府県や市ごとに違う

介護テクノロジー導入支援事業の実施主体は、都道府県・指定都市・中核市です。事業所は国に直接申請せず、所在地の自治体の募集に応じます。そのため、募集の有無、受付期間、基準額、提出書類は自治体ごとに異なります。

自治体の案内の例(2026年10月24日に確認)
自治体公式ページで確認できた内容読み取れること
島根県ICTの導入支援の提出期限は令和8年5月21日。松江市内の事業所は対象外中核市の事業所は県ではなく市の募集に申請する
大阪府令和8年度事業の受付は終了。政令市・中核市から指定を受けた事業所は各市の募集が対象年度の早い時期に締め切られることがある
長野県令和9年度の活用希望調査を令和8年9月9日締切で実施(締切済み)。長野市・松本市の指定事業所は各市に申請翌年度の予算化に向けて、前年度の夏から秋に希望調査が行われることがある

出典:島根県、大阪府、長野県の公式ページ。

まず事業所の指定権者(都道府県か、指定都市・中核市か)を確かめ、その自治体の障害福祉担当課のページで「介護テクノロジー」「ICT導入支援」の募集を探します。見つからない場合は、実施予定と次回の募集時期を担当課に問い合わせてください。

障害児支援の事業所向け:こども家庭庁のICT化推進事業

児童発達支援、放課後等デイサービスなどの障害児通所支援、障害児入所支援、障害児相談支援の事業所には、こども家庭庁の「地域障害児支援体制充実のためのICT化推進事業」があります。令和8年1月9日付けの通知(こ支障発第414号)で実施要綱が示され、実施主体は同じく都道府県・指定都市・中核市です(実施要綱(島根県サイト掲載))。

  • 補助対象:情報端末、ソフトウェア、通信環境機器等、保守経費等(AIカメラ等の区分はありません)
  • 研修会への参加が補助の要件
  • 厚生労働省の介護テクノロジー導入支援事業や、経済産業省のIT導入支援事業で補助を受けたICT導入事業は対象外
  • 過去に同種の補助で同種のICT機器等を購入した事業者は対象外

島根県の令和8年度の募集では、補助率は国1/2・県1/4・事業者1/4、1事業所あたりの基準額は100万円、提出期限は令和8年7月15日でした(島根県)。障害者向けと障害児向けの両方のサービスを行う多機能型の事業所は、どちらの事業で申請するかを自治体に確認してください。

デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)

2026年度から、従来の「IT導入補助金」は「デジタル化・AI導入補助金」に名称が変わりました。中小企業・小規模事業者等が、事務局に登録されたITツールを導入する費用の一部を補助する制度で、中小企業庁のミラサポplusで公募要領の公開が案内されています。事務局サイトでは、中小企業基盤整備機構の補助事業として運営されています(事務局公式サイト)。

障害福祉事業所が対象になる条件

公募要領では、社会福祉法人・医療法人は常時使用する従業員300人以下、株式会社などの会社は業種ごとの資本金・従業員数の基準、NPO法人や一般社団法人は主たる業種の従業員規模以下が対象とされています。障害福祉事業所を運営する法人も、この基準を満たせば申請できます。

通常枠の補助率・補助額

通常枠(第7回公募以降の公募要領、2026年10月9日版)
補助額機能要件補助率対象経費
5万円以上150万円未満1プロセス以上1/2以内(最低賃金に関する条件を満たす場合は2/3以内)ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費
150万円以上450万円以下4プロセス以上同上同上

出典:デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)。申請にはGビズIDプライムの取得、IPAの「SECURITY ACTION」の宣言、事務局に登録されたIT導入支援事業者と連携した申請が必要です。また第7次公募回以降の制度変更で、1人当たり給与支給総額の向上に関する申請要件が追加されています。

2026年10月24日時点のスケジュール

事務局の事業スケジュールでは、通常枠の次の締切は2026年10月30日(金)17時、交付決定日は12月10日(予定)と掲載されています。それ以降の締切は「確定している募集回のみ公表」とされているため、最新の日程は事務局サイトで確認してください。

自治体独自の補助(東京都の例)

国の事業とは別に、自治体が独自の名称・要件で補助を設けている場合があります。たとえば東京都は、令和8年度の案内で「デジタル技術を活用した障害福祉サービス事業所等支援事業」を掲載しています(東京都福祉局の案内)。

  • 対象経費:福祉・介護業務支援システム経費(ソフトウェアやクラウドサービスの購入費、保守・サポート費、導入経費等)、タブレット端末・スマートフォン等のハードウェア、システムの選定や業務改善に関するコンサルティング経費
  • 対象施設:すべての障害福祉サービス事業所・施設
  • 補助基準額:システムとハードウェアは職員数に応じて設定、コンサルティングは100万円
  • 交付申請:年2回(令和8年夏・秋)を予定(案内時点)。要綱・Q&Aは別途案内

市区町村が独自に補助を行う場合もあります。同じ機器への重複申請は認められないため、どの補助を使うかは担当課に相談してください。

対象になりやすい経費・対象外になりやすい経費

業務ソフトの導入でよく問題になる経費を、2つの制度で比べます。

経費ごとの扱い(各実施要綱・公募要領より)
経費介護テクノロジー導入支援(ICT)デジタル化・AI導入補助金(通常枠)注意点
記録・請求などの業務ソフト対象(要件あり)対象(登録されたITツールのみ)ICTの導入支援では、記録・情報共有・請求を転記なしで一気通貫で行えることが要件
クラウド利用料対象(当該年度分のみ)対象(最大2年分)複数年のライセンスを一括購入しても、国のQ&Aでは当該年度分のみ
タブレット・スマートフォン・インカム対象通常枠の対象経費には含まれない大阪府の案内では、既存機器の更新・増強の追加購入は対象外
導入設定・研修・保守対象(端末・ソフト等の導入に必要なものに限る)導入関連費として対象役務費が著しく高額でないことが求められる
リース・レンタル対象外(購入が原則)対象外機器は購入で計画する
既存システムの改修・自社開発対象外登録されたITツールに限られる個別カスタマイズの費用も対象外(国のQ&A)
インターネット回線使用料対象外対象外通信費は自己負担

ソフトウェアは企業が保証する商用製品であることが求められ、勤怠管理・シフト作成などのバックオフィス用ソフトも、転記が発生しない一気通貫の環境を実現できるものは対象です(実施要綱 5(2)ウ)。

申請の流れ(一般的な手順)

介護テクノロジー導入支援事業の一般的な流れです。順番や名称は自治体の募集要項を優先してください。

  1. 所在地の自治体(都道府県・指定都市・中核市)の募集案内と実施要綱、Q&Aを確認する
  2. 業務の課題と導入の目的を整理し、導入する機器・ソフトの候補を決める
  3. 複数の業者から見積書を取る(原則として最低価格の業者を選ぶ)
  4. 事業計画書と積算内訳書を作り、見積書の写し・パンフレットを添えて国庫補助協議の書類を提出する
  5. 自治体が開催するICT導入の研修会に参加する(補助を受けるための要件)
  6. 内示・交付決定を受けてから、契約・購入する
  7. 導入・運用を始め、導入前後の効果を測る
  8. 実績報告書と精算内訳書を提出し、補助金を受け取る
  9. 導入製品の内容や効果を、事業所のホームページ等で公表する

デジタル化・AI導入補助金では、IT導入支援事業者とITツールを選び(契約はしない)、GビズIDプライムを取得して交付申請します。交付決定後に契約・導入・支払いを行い、実績報告、補助金の交付、効果報告と進みます(公募要領 3-1)。

申請前に押さえる注意点

公式資料で確認できた主な注意点です。

  • 内示・交付決定の前に契約・購入しない:国のQ&Aでは「内示後に購入した」機器等が対象とされ、大阪府の案内でも交付決定通知以降に導入した経費が対象です。デジタル化・AI導入補助金も、交付決定前の契約・発注・支払いは補助の対象になりません。
  • 研修会への参加:国の2つのICT導入の事業では、自治体の研修会への参加が補助の要件です。
  • 年度内の完了:当該年度中に係る経費のみが対象で、年度内に事業を完了する必要があります。
  • 効果の報告と公表:定量的な指標で導入前後を比べて報告し、導入製品や効果をホームページ等で公表します。
  • 他の国庫補助との重複:他の国庫補助事業で補助を受けている場合は対象になりません。
  • 計画外の機器:事業計画書にない機器は、補助対象と認められない場合があります(国のQ&A)。
  • 優先採択:処遇改善加算の算定(見込みを含む)などを満たす事業所は、優先的に採択するとされています。

事業計画書の書き方:NG例と書き換え例

国のQ&Aでは、導入による定量的効果が事業計画書に明確に示されていることが重要とされています。以下は架空の事例です。

事業計画書の「導入効果」欄の書き換え(架空の事例)
NG例問題点書き換え例
ソフトを入れて業務が楽になる何がどれだけ変わるか測れない支援記録の入力と転記にかかる時間を、導入前後に各2週間記録して比べる
タブレットを全員に配る必要性と台数の根拠がない送迎・作業場面で記録する支援員6名分とし、その場で入力して事務所での転記をなくす
情報共有がよくなる指標がない申し送りのための集合時間(1日あたり)と、記録の確認漏れの件数を導入前後で比べる

ソフト選びと補助金の関係

補助金は導入費用の一部を支える仕組みで、自己負担や運用の手間はなくなりません。補助の対象かどうかだけで選ぶと、翌年度以降の利用料や職員が使いこなせるかが後回しになりがちです。業務の課題に合うソフトを選び、そのうえで使える補助を確認する順番をおすすめします。

補助金を使う前提でソフトを選ぶときの確認項目
確認項目確認する理由確認先
記録・情報共有・請求を転記なしでつなげられるか介護テクノロジー導入支援のソフトウェア要件に関わる実施要綱、提供元
デジタル化・AI導入補助金のITツールとして登録されているか登録されたITツールしか申請できない提供元、事務局サイト
見積書を年度ごとの費用で出せるかクラウド利用料は対象期間が制度ごとに違う提供元
導入前後の効果を測れるか実績報告で定量的な効果の報告が必要事業所内で計画
補助終了後の利用料を払い続けられるか翌年度以降は自己負担になる提供元の料金表

ソフトの種類や比較の観点は、障害福祉ソフト比較でも整理しています。厚生労働省の障害福祉サービス事業所のICTを活用した業務改善ガイドラインも、導入目的の整理に役立ちます。

AIで書類作成の負担を減らすソフトを検討する場合

株式会社JinのAURAは、障害福祉事業所向けのAIサービスです。AURA相談支援は面談音声や資料からアセスメントやサービス等利用計画案などの下書きを、AURA就労支援は面談音声や支援記録から個別支援計画書などの下書きを作成し、相談支援専門員や職員が確認・判断します。書類作成の負担を減らし、利用者支援に使える時間を確保することをめざしています。AIの出力はあくまで下書きで、最終判断は職員が行います。

AURAがこの記事で紹介した補助金の対象になるかどうかは、本記事では確認していません。補助金の利用を前提に検討する場合は、提供元にITツールの登録状況や見積書の形式を、自治体に要件への当てはまりを確認してください。

よくある質問

AIで書類を作るソフトも補助の対象になりますか?

ソフトの種類ではなく、各制度の要件を満たすかで決まります。介護テクノロジー導入支援事業では記録・情報共有・請求の一気通貫などの要件を自治体が確認し、デジタル化・AI導入補助金では事務局に登録されたITツールであることが必要です。

すでに契約したソフトの費用は申請できますか?

原則としてできません。国のQ&Aでは内示後の購入が対象とされ、デジタル化・AI導入補助金も交付決定前に契約・発注したITツールは対象外です。

国の事業とデジタル化・AI導入補助金は併用できますか?

同じ導入に重ねて使うことはできません。介護テクノロジー導入支援事業は他の国庫補助を受けている場合は対象外で、こども家庭庁の事業もIT導入支援事業で補助を受けたICT導入を対象外としています。

開設予定の事業所でも申請できますか?

介護テクノロジー導入支援事業は、新規開設時の補助を目的としていないとされています。国のQ&Aでは、導入成果を客観的・定量的に確認できない場合は対象にならないとされているため、自治体に相談してください。

どこに問い合わせればよいですか?

国の障害福祉分野の事業は、事業所の指定権者である都道府県・指定都市・中核市の障害福祉担当課に問い合わせます。デジタル化・AI導入補助金は、事務局のコールセンターか、IT導入支援事業者に相談します。

参考資料

本記事は2026年10月24日時点の情報です。募集状況・金額・締切は変わるため、申請前に各公式サイトで確認してください。

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