個別支援計画をAIで下書きする手順と注意点|確認項目と個人情報の扱い

公開日:2026/10/23

個別支援計画をAIで下書きする手順と注意点|確認項目と個人情報の扱い

個別支援計画をAIで下書きするときは、サービス管理責任者が本人同意と事業所ルールを整えたうえで、面談記録からAIに原案を作らせ、意向・目標・支援内容を確認・修正してから会議・同意・交付へ進めます。

本記事は、就労移行支援・就労継続支援A型・B型のサービス管理責任者向けに、AIで原案を作る手順、確認すべき点、個人情報の扱いを整理します。障害福祉AIの全体像は障害福祉AIとは、各欄の書き方は個別支援計画書の書き方で解説しています。

目次

  1. 個別支援計画でAIができること・できないこと
  2. 運営基準の作成手順とAIが入る工程
  3. 始める前の準備:本人同意と事業所ルール
  4. AIで下書きする手順(7ステップ)
  5. 下書きで確認すべき点チェックリスト
  6. AI下書きのよくある誤りと書き換え例
  7. 汎用AIと専用ソフトの違い
  8. AURA就労支援での流れと導入事例
  9. よくある質問
  10. まとめ
  11. 関連記事
  12. 参考資料

個別支援計画でAIができること・できないこと

AIが得意なのは、面談の文字起こし、アセスメント情報の整理、様式に沿った文章の下書きです。本人の意向の確定、支援方針や目標の判断、同意の取得は、サービス管理責任者が担います。AIの出力は「確認前の原案のたたき台」です。

個別支援計画の作業ごとのAIと人の役割
作業AIができること人が担うこと注意点
面談の記録音声の文字起こし、話題ごとの要約録音の説明と同意、聞き取れない部分の確認固有名詞の誤変換が起きる
アセスメントの整理能力・環境・生活状況などの項目への振り分け観察した事実の追加、評価の判断発言がそのまま事実として扱われやすい
原案の文章化意向、方針、目標、支援内容の文案作成目標の妥当性と達成時期の判断誰にでも当てはまる文になりやすい
表現の調整平易な言い換え本人に伝わるかの最終確認言い換えで意味が変わることがある
会議・同意・交付会議記録の要約会議の開催、説明、文書による同意、交付AIでは代替できない手続き

AIを使っても計画の作成責任は変わりません。短くなるのは「白紙から書く時間」であり、本人と話す時間や確認の時間は、むしろ確保すべき工程です。

運営基準の作成手順とAIが入る工程

就労移行支援・就労継続支援A型・B型の個別支援計画は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号、以下「運営基準」)の第58条を、就労移行支援は第184条、A型は第197条、B型は第202条で準用して定められています。手順のどこでAIを使うかを決めておくと、運営指導でも説明しやすくなります。

第58条(準用)の手順とAIの使いどころ
工程基準上の主な要点AIの使いどころ人が必ず行うこと
アセスメント利用者に面接して行い、趣旨を説明して理解を得る。意思決定に困難がある場合は意思や選好を丁寧に把握する文字起こし、項目整理面接の実施と趣旨説明、意思の確認
原案の作成本人と家族の意向、総合的な支援の方針、課題、目標と達成時期、留意事項等を記載する原案の文章の下書き内容の判断と修正
作成に係る会議利用者と担当者等を招集し、意向を改めて確認し、原案に意見を求める(テレビ電話装置等も可)会議記録の要約会議の開催と意見の反映
説明・同意・交付利用者または家族に説明し、文書で同意を得る。利用者と指定特定相談支援事業者等に交付する説明用の平易な文の案説明、同意の取得、交付
モニタリング・見直し継続的なアセスメントを行い、就労移行支援は少なくとも3月に1回以上、A型・B型は少なくとも6月に1回以上見直す支援記録の要約、変化の整理定期的な面接と記録、変更の判断

本人の意思や選好を把握する考え方は、厚生労働省の障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン(障発0331第15号、平成29年3月31日)でも示されています。AIが整理した「本人の希望」は、本人が自分の言葉で確かめる機会を設けてから計画に反映します。

また、運営基準第75条(準用)では、個別支援計画をサービスを提供した日から5年間保存することが定められています。AIの下書きを残すか、残すならどこに保存するかも文書管理ルールに含めます。指定権者の条例で保存年限が別に定められている場合もあるため、所在地の基準も確認してください。モニタリングの記入方法は就労支援のモニタリングシートで解説しています。

始める前の準備:本人同意と事業所ルール

始める前に決めておくのは、本人への説明と同意、使ってよいAIの範囲、入力してよい情報の範囲の3点です。曖昧なまま職員個人のアカウントで汎用AIを使い始めるのは避けます。

障害に関する情報は要配慮個人情報

個人情報の保護に関する法律第2条第3項と同法施行令第2条第1号により、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)などの心身の機能の障害があることは、要配慮個人情報にあたります。同法第20条第2項では、法令に基づく場合などの例外を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで要配慮個人情報を取得してはならないとされています。

アセスメントや面談音声には、障害特性、通院や服薬、家族関係などが多く含まれます。録音とAI処理を行う場合は、利用目的を明示し、障害特性に合わせた分かりやすい方法で次の点を説明して同意を得ます。

  • 録音とAI処理の目的(どの書類の下書きに使うか)
  • AIの下書きは職員が確認・修正してから使うこと
  • 音声や下書きの保存期間と削除の時期
  • 情報を確認できる職員の範囲
  • 録音を断りたい、利用を止めたい場合の伝え方

個人情報保護委員会の生成AI注意喚起

個人情報保護委員会は、令和5年6月2日の生成AIサービスの利用に関する注意喚起等で、個人情報取扱事業者に向けた注意点を示しています。要点は次の2つです。

  1. 個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、特定された利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認する
  2. 本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、それが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合、個人情報保護法に違反する可能性がある。そのため、サービス提供事業者が個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認する

あわせて、同法第23条(安全管理措置)、第25条(委託先の監督)、第27条(第三者提供の制限)も、AIサービスを選ぶ際の確認の軸になります。入力したデータが学習に使われないか、どこで処理・保存されるかを、利用規約や契約で確認してください。

事業所で決めておくルール

AI利用ルールで決めておく項目(架空の例)
項目決めることルールの記入例よくある誤り
使ってよいAI法人として契約・確認したサービスに限るか法人契約のサービスのみ使用する職員個人の無料アカウントで入力する
入力範囲どの情報を伏せるか汎用AIには氏名・生年月日・受給者証番号・家族や勤務先の名前を入れず、「Aさん」「母」などに置き換える受給者証の画像をそのまま貼り付ける
同意の記録録音とAI処理の同意をどの書面に残すか利用契約時の同意書に項目を追加する口頭の了承だけで記録がない
確認者誰が下書きを確認し、確定するかサービス管理責任者が確認し確定する作成した職員だけで確定する
保存と削除音声、下書き、確定版の保存先と期間確定版のみ記録として保存し、音声は期限で削除個人のパソコンに音声が残る

仮名にしても、地域名や珍しい経歴が組み合わさると個人が推測できることがあります。入力前に一度読み返してください。

AIで下書きする手順(7ステップ)

新規利用者の個別支援計画を作る場面を想定し、サービス管理責任者が行う流れを7つに分けます。記入例は架空の事例です。

  1. 同意と準備:録音とAI処理の目的を説明して同意を確認し、サービス等利用計画、受給者証の内容、体験利用の記録をそろえます。
  2. アセスメント面談:希望、得意・苦手なこと、生活リズム、体調、就労経験、家族や関係機関の状況を聞き取ります。録音していても、要点はその場で本人と確認します。
  3. 文字起こしと整理:AIで文字起こしを作り、事業所のアセスメント項目に沿って整理させます。本人の発言、職員の観察、他機関からの情報を分けるよう指示します。
  4. 原案の下書き:アセスメントとサービス等利用計画をもとに、意向、総合的な支援の方針、長期・短期目標、支援内容、留意事項の文案を作らせます。
  5. 確認・修正:次の章のチェックリストで、意向の反映、目標の評価可能性、支援内容の具体性、事実と推測の区別を確認し、書き直します。
  6. 作成に係る会議:本人と担当職員が参加する会議で意向を改めて確認し、原案への意見を反映します。
  7. 説明・同意・交付:本人(必要に応じて家族)に分かりやすく説明し、文書で同意を得て、本人と相談支援事業所に交付し、交付日を記録します。

ステップ4の指示文は、たとえば次のように書きます(架空の例)。

以下のアセスメント整理をもとに、就労移行支援の個別支援計画の原案を作成してください。本人の発言は「本人より」と示し、職員の観察と分けてください。目標は達成を確認できる行動で書き、達成時期を入れてください。支援内容は担当、頻度、方法が分かる形で書いてください。アセスメントにない情報は推測で補わず、「要確認」と書いてください。

「推測で補わず要確認と書く」と入れておくと、もっともらしい情報の付け足しを抑えやすくなります。それでも起きることはあるため、確認の工程は省けません。

下書きで確認すべき点チェックリスト

AIの下書きを受け取ったら、少なくとも次の項目を確認します。様式にチェック欄を設け、確認したことを記録するのも一つの方法です。

AI下書きの確認チェックリスト
確認項目見るポイント確認の方法
意向の反映本人の言葉が職員の言葉に置き換わりすぎていないか面談記録の該当発言と照らし合わせる
家族の意向との区別家族の希望が本人の希望として書かれていないか誰の発言かを文頭で明示する
目標の評価可能性達成したかを誰が見ても判断できるか行動・回数・期間で書けているか見る
達成時期目標ごとに達成時期が入り、見直し時期と合っているか就労移行は3か月、A型・B型は6か月以内の見直しと照合する
支援内容と担当・頻度担当、頻度、方法が書かれているか「誰が・いつ・何を・どのように」がそろうか見る
事実と推測の区別アセスメントにない情報が付け足されていないか根拠となる記録がない文に印をつける
サービス等利用計画との整合総合的な援助の方針や目標と矛盾がないか相談支援事業所の計画と並べて読む
固有名詞・日付・数値氏名、日付、日数、時間に誤りがないか受給者証や記録の原本と照合する

特に見落としやすいのが事実と推測の区別です。AIは文章を自然につなげるため、面談で出ていない「対人関係が課題」といった推測を加えることがあります。根拠のない文は削除するか、会議で本人に確認する事項として残します。

AI下書きのよくある誤りと書き換え例

AIの下書きで起きやすい誤りと、確認後の書き換え例です。いずれも架空の事例です。

NG例と書き換え例(架空の事例)
誤りの種類AI下書きのNG例書き換え例直した理由
意向の言い換えすぎ一般就労に向けて職業能力の向上を図りたい本人より「事務の仕事で、週4日から働きたい」本人の言葉と具体的な希望を残すため
評価できない目標生活リズムを整え、安定して通所する3か月間、週4日の通所を続け、欠席時は前日までに連絡する期間と行動で達成を判断できるようにするため
担当・頻度がないパソコン訓練を支援する職業指導員が週2回、表計算の入力練習を行い、月1回本人と振り返る誰が・いつ・何をするかを明確にするため
根拠のない推測対人関係に課題があるため、配慮が必要である本人より「大人数の場は疲れやすい」。作業は少人数の班で始め、様子を確認する面談で出た事実だけにするため
家族と本人の混同本人はA型での就労を希望している母より「A型で働いてほしい」。本人は「まずは通所に慣れたい」と話している誰の意向かを分け、本人を中心にするため

書き換え後の文は長くなりますが、会議や説明の場で本人と確認しやすくなります。

汎用AIと専用ソフトの違い

下書きに使えるAIは、大きく「汎用の生成AI」と「障害福祉向けの専用ソフト」に分かれます。どちらが適しているかは、事業所の規模、情報管理の体制、使っている業務ソフトによって変わります。

汎用AIと障害福祉向け専用ソフトの比較
観点汎用の生成AI障害福祉向けの専用ソフト確認すること
様式への対応指示文で様式を毎回伝える必要がある計画書などの様式に沿った下書きを想定している自事業所の様式で出力できるか
個人情報の扱いプランや設定により学習利用や保存の条件が異なる要配慮個人情報を扱う前提の設計が多い学習利用、保存期間、処理場所、委託先
他の書類との連携アセスメントやモニタリングとの連携は手作業記録、計画、モニタリングを同じ利用者情報で扱えるものがある記録・実績・請求までつながるか
導入のしやすさすぐ試せるが、ルール作りと教育は事業所側で行う契約や初期設定が必要サポート体制、費用、試用の可否

汎用AIなら、前述の入力ルールを守り、個人を特定できる情報を入れない運用が前提です。専用ソフトでも、同じ観点で利用規約やデータ取扱いの説明を確認してください。

AURA就労支援での流れと導入事例

AURA就労支援は、株式会社Jinが提供する就労移行支援・就労継続支援A型/B型向けの障害福祉AIです。面談音声や支援記録からアセスメント、個別支援計画書、モニタリング報告書などの下書きを作成し、職員が確認・修正します。利用者管理、支援記録、実績、国保連請求まで一つの環境で扱えるため、情報を別のツールへ写し直す手間を減らし、書類作成の負担を軽くして利用者と向き合う時間を増やすことを目指しています。

  1. 本人に録音とAI処理を説明し、同意を得てから面談を録音する
  2. 面談音声や支援記録から、アセスメントと個別支援計画書の下書きが作成される
  3. サービス管理責任者が意向、目標、支援内容を確認・修正する
  4. 会議、説明、同意、交付を経て確定し、支援記録やモニタリングにつなげる

データの取扱いはAURAのデータ取扱い・セキュリティで公開しています。通信の暗号化とアクセス権限の管理を行い、要配慮個人情報などを外部AIサービス提供者自身のモデル学習等に使うことを条件とするサービスは原則利用しない方針です。面談音声は保存開始から7日経過後に削除対象となり、夜間処理を含め最大8日程度で削除されます。

事例1:計画書づくりが確認・修正中心に(Omoro-Step)

就労移行支援Omoro-Stepで3事業所を統括し、サービス管理責任者も兼ねる日下部渉さんは、個別支援計画を1から作るとアセスメントを見ながら状態像を考えるため約1時間かかっていたと話します。AURAがアセスメントから下書きを作るようになり、確認・修正が中心になって約10分になったと語っています(日下部さんのインタビュー)。

事例2:面談で顔を見て話せるように(Omoro-Step天満橋事業所)

サービス管理責任者の二川祐子さんは、面談中にメモを取ると目を見て話すことが難しかったと振り返ります。導入後は、新規利用者のアセスメントから個別支援計画の原案作成までが30分から1時間ほどで完結する流れになり、面談中に顔を見て話せるようになったと話しています(二川さんのインタビュー)。

※事例の時間は、各インタビューで語られた個別の体験・概数です。体制や利用者の状況によって異なり、同じ効果を保証するものではありません。

機能や導入の流れは、AURA就労支援の資料を受け取るからご確認いただけます。

よくある質問

AIの下書きをそのまま計画書にしてよいですか

そのまま使わず、サービス管理責任者が確認・修正してから原案として扱ってください。運営基準が求めるアセスメントに基づく原案作成、会議での意見聴取、文書による同意は、AIでは代替できません。

録音とAI処理は行わず、従来どおりの記録で計画を作成します。同意しないことで支援が不利にならないと伝え、職員が入力した記録をAIの整理に使うかは、事業所ルールと本人の意向に沿って個別に判断します。

運営指導でAIを使ったことは問題になりますか

確認されるのは、AIの使用の有無よりも、基準に沿った手順で計画が作成され、同意や交付の記録がそろっているかです。各工程の記録と、個人情報の取扱いルール・同意書を説明できるようにし、不安があれば所管の自治体に確認してください。

モニタリングや計画の見直しにも使えますか

使えます。モニタリング面談や支援記録から変化を整理させると、見直しの下書きを作りやすくなります。達成状況の評価と変更の判断は人が行い、変更時も原案作成から同意・交付までの手順を踏みます。

まとめ

  • AIが担うのは文字起こし、情報整理、原案の文章化まで。意向の確定、目標の判断、会議、同意、交付は人が行う
  • 障害に関する情報は要配慮個人情報。録音とAI処理の目的を説明し、同意を得てから始める
  • 汎用AIを使うなら、学習利用の有無を確認し、個人を特定できる情報を入力しない
  • 下書きは、意向の反映、目標の評価可能性、担当と頻度、事実と推測の区別を確認してから原案にする

AIを使う目的は、白紙から書く時間を減らし、本人の話を聞く時間と計画の中身を考える時間を確保することにあります。

参考資料

本記事は2026年10月23日時点の情報です。

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